以前にご紹介した1934年版に比べれば、分厚く二倍ほどの厚み(3.2cm)で六百余ページにもなります。
四十二年前の発行ですが、この年は、東京オリンピックが開催された年、東海道新幹線が営業運転を開始した年、そして、この私が宮仕えを始めた年でもあります。
アマチュア無線局のコールサインの発給では、この頃は、JA1N##の後半からJA1O##の前半だった様に記憶しています。この頃のアマチュア無線界ではAMによる交信が主流で、多くの局がトリオ製の送信機TX-88Aと受信機9R-59を使用していました。
40年ぶりに日の目を見た TRIOのTX-88A(下)と9R-59(上) (私物) |
この頃になると、アマチュア無線機器のメーカー各社から数多くの魅力的な機能が付加された送信機や通信型受信機が発売されました。なかには完成品と半完成品(キット)の両方が用意され、腕に自信のある人は完成品より廉価なキットを組み立てることに果敢にチャレンジしました。
しかし、全て自分流と言う人も多く、送信機も受信機も、一つ一つ部品を集めての正に手作りでした。そんな時のお手本として、和書ではCQ ham radio、輸入の洋書としてこの「The radio amateur's handbook」は、多くのアマチュア無線家に教科書代わりとして大変重宝がられました。
もちろん、単にハードウェアとしての無線機を作るだけのガイドブックではなく、電子回路の解説、アンテナの理論、電波の伝わり方、電波の測定方法、無線局のレイアウト、混信妨害への対処、無線局の運用方法などなど、アマチュア無線家として知っておくべき諸々が懇切丁寧に解説されています。
それ故、「The radio amateur's handbook」は、その後も何かに付けてページを繰ってみるバイブル的な存在であり続けました。
The radio amateur handbook-41th edition 1964 |
真空管時代が終わろうとする時期の発行ですが、内容的には日本とアメリカの差は詰まって来たように感じます。目次だけでも紹介しておきますと、
CONTENTS
The Amateur Code
Chapter 1 Amateur Radio
Chapter 2 Electrical Law and Circuits
Chapter 3 Vacuum-Tube Principles
Chapter 4 Semiconductor Devices
Chapter 5 High Frequency Receivers
Chapter 6 High Frequency Transmitters
Chapter 7 Power Supplies
Chapter 8 Keying and Break-In
Chapter 9 Speech Amplifiers and Modulators
Chapter 10 Amplitude Modulation
Chapter 11 Suppressed-Carrier and Singl Sideband Techniques
Chapter 12 Specialized Communication Systems
Chapter 13 Transmission Lines
Chapter 14 Antennas
Chapter 15 Wave Propagation
Chapter 16 VHF Receivers and Transceivers
Chapter 17 VHF Transmitters
Chapter 18 VHF Antennas
Chapter 19 Mobile and portable-Emergency Equipment
Chapter 20 Construction Practices
Chapter 21 Measurements
Chapter 22 Assembling a Station
Chapter 23 Interference With Other Services
Chapter 24 Operating a Station
Chapter 25 Vacuum Tubes and semiconductors
この「The radio amateur's handbook」は、アメリカにおいては、今も昔もアマチュア無線家の座右の書であるのは疑う余地はありません。 しかしながら、日本ではアマチュア無線のニューカマーに是非とも読んで欲しい、あるいは進んで読みたいと思う和書が無いのが実に残念です。できれば、ハードウェアの事は勿論ですが、ソフトウェア的な事についても、もっともっと知って欲しいと私は切に思います。
余談ですが、
昔は、SWLを何年もやって先輩局の一挙手一投足を注意深く見習い、年に二回しかなかったアマチュア無線技士の国家試験に何度か挑戦しました。
艱難辛苦のすえ国家試験に合格して、ようやく免許を授かり、そして無線工学書やCQ ham radio、ラジオ雑誌などを参考に試行錯誤しながらも無線機を製作し理論を実証する過程も経て、アマチュア無線局を開局する長い道のりがありました。
しかし今は、たった二日の講習会を履修することでアマチュア無線技士の免許が貰えて、アマチュア無線局の開局手続きも簡単、高性能な無線機の調達も簡単で、たいへん結構なご時世になりました。
そして準備が整えば、マイク片手に即「ジャパ〜ン アメリカ ナンバーワン・・・」なんて叫びつつ交信相手を捜し、応答があれば「おコエ掛け有り難うございます」、「シグナルレポートはゴトキューです」なんて、もう一人前のアマチュア無線通信士?になれます。
とても安直な時代になったと思いますが、アマチュア無線局を開局するのも簡単、閉局も廃局も簡単で、十年ほど前から毎年毎年アマチュア無線人口が減少していく傾向にあり、何処かに予想外?のボタンの掛け違いがあるのではないでしょうか?
0 件のコメント:
コメントを投稿